今日の言葉

男女の結びつきを翻訳語の「愛」で考える習慣が日本の智識階級の間に出来てから、いかに多くの女性が、そのために絶望を感じなければならなかったろう?
江戸時代のように男女の関係が、惚れている、恋しているという言葉で語られ、愛という怖ろしい言葉で語られていなければ、そのような時に男性に裏切られる女性の痛手ははるかに軽いであろう。
(伊藤整「近代日本における「愛」の虚偽」より)